演劇・舞台の感想です。
先日観劇。
本公演は終了してますからいまさらですが…ネタバレ注意!!
『さらばわが愛〜覇王別姫』
スタッフ/原作:李碧華 脚本:岸田理生
演出:蜷川幸雄 音楽:宮川彬良
出演/程蝶衣(チョン・ティエイー):東山紀之
段小楼(トァン・シャオロウ):遠藤憲一
菊仙(チューシェン):木村佳乃
袁世凱(ユアン・スーチン):西岡徳馬
この作品は
香港・中国の合作映画
『さらば、わが愛 覇王別姫』
(さらば、わがあい はおうべっき)の舞台化。
中国映画界の恐るべき新世代監督・陳凱歌(チェン・カイコー)監督
香港映画界の華・最美期の張國榮(レスリー・チャン)
世界の映画祭の女優賞を総なめにしていく鞏俐(コン・リー)
これらの力を終結して
第46回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した映画の舞台化。
…無謀だろ。
舞台化の話を聞いた時、出演者を知った時
映画にハマって、原作も読んだ一ファンの私としての、正直な感想。
レスリー・チャンにハマって香港まで行った私にとって
基本“蝶衣”は彼以外ありえないと思っているから
辛口の感想になるのは否めない…申し訳ない。
映画でも若干走りすぎた感のある172分の映像を
約2時間の舞台にする。
この舞台を観て、原作未読・話について何の基礎知識もない人に
理解できたんだろうか?と思った。
それに、なぜ“音楽劇”にする必要があったのか?
演劇に“音楽”は付き物であり
この舞台はそもそも京劇俳優の半生記なので
劇中劇として“京劇”が演じられたり、役柄として歌うシーンもある。
わざわざ、音楽劇と銘打って
それ以外のシーンで役者に歌わせる意味はあるのだろうか?
それでなくても
京劇の発声は特殊で、歌手の東山さんをもってしても
「痛々しい」という感想しかもてなかった。
映画では、吹き替えであったと記憶している。
京劇の「覇王別姫」の部分や
蝶衣が歌えなくて悩んだ「昆曲」を中国語原曲・吹き替えでやり
字幕をつけるという方法なら、日本語の京劇という違和感はなかったのかも。
役者さんはみんな
「がんばっているなぁ〜」と思った。
しかし、あまりに専門的な技量の要る分野の舞台。
バレエダンサーでない役者が、
踊るシーンのあるバレエ映画に出るような違和感。
いくら特訓を積んだとしても
いくらカット割りで工夫したとしても
“すばらしいバレエダンサー”役の役者が
すばらしい“バレエダンサー”ではないと判る。
鼻白む感覚。
京劇俳優役でない、普通の人役の木村佳乃さんや
特に西岡徳馬さんは秀逸だったのに…。
劇中劇の“項羽”役を
本物の京劇役者が遠藤さんのスタントで演じられている部分があった。
静止時には、化粧と衣装でごま消せても
本物は、演技時に項羽の頭飾りの赤いボンボンが
ビリリと細かく震えるのですぐわかる。
せめて
蝶衣は基礎素養のある歌舞伎出身者が演じていたら
もっと男に生まれながら“女形”として生きなければならなかった
悲哀が仕草ににじみ出ていたのでは。
一番最初からのシーン
ラストに全く同じシーンがフラッシュバックのように演じられる。
“額縁”のような構成。
そのラストに全く同じに演じられる部分が結構長い…。
一番イイ!と思ったシーンが
一番最初の幼い蝶衣が母に追いかけられるシーンと
その印象的な音楽だったというのは
なんかもったいない…。